こんにちは,Hiroです.今回は,
- 大学院の概要
- 大学院生は何をするのか
等について解説します.
この記事を書いているのはこんな人
- 院卒化学系エンジニア
- 中堅国立大学大学院2021年3月卒業
では,早速行ってみましょう!
大学院って何?
まず、大学院には以下の4種類の大学院が存在します。
- 学部を持つ大学院
- 独立研究科
- 大学院大学
- 専門職大学院
学部を持つ大学院
学部を持つ大学院とは、例えば文学部の研究機関「文学研究科」、理学部の研究機関「理学研究科」のように、基礎となる学部組織がある大学院のことです。
大学の学部で得た知識を発展・応用させながら、さらに高度で専門的な研究や教育を行います。

独立研究科
学部を持つ大学院と異なり、基礎となる学部組織を持たないのが独立研究科です。
多彩な学部の卒業生を受け入れ、各人の専門性を融合させながら、新しい研究ジャンルを生み出したり深めたりできる点が特徴的です。
例えば、ビジネスをテーマに構想力や戦略的思考を培うことを目指す「ビジネスデザイン研究科」、国際的視野を持ってエネルギー問題や環境問題の解決に取り組む人材育成を目指す「エネルギー科学研究科」などが該当します。
大学院大学
大学院大学は、学部のある大学を持たない大学院だけの機関です。独立大学院とも呼ばれます。
日本の民主的統治や政策立案のプロ育成を目指す「政策研究大学院大学」などが知られています。
専門職大学院
研究に主眼を置くのではなく、高度で専門的な能力を磨いて実務の場で活かせる「高度専門職業人」の養成を目指す大学院です。
例えば、法科大学院がこれに当たります。
出典:タウンワークマガジン
基本的に、大学院とは大学で学んだことをより深く学ぶ場所という認識でOKです。

つまり、○○大学工学部から○○大学大学院工学研究科に進んだということです。
ちなみに、大学では工学部や理学部という名称ですが、大学院では工学研究科や理学研究科という風に名称が変わります。
また、大学院の正式名称も○○大学院ではなく○○大学大学院です。
以下で大学院について説明しますが、僕自身は「学部を持つ大学院」に通っているので、他の種類の大学院には当てはまらないこともあるかもしれません。ご了承ください。
大学院に進学するためには?
大学院に進学するには大学院入試(いわゆる院試)に合格しなければいけません。
院試は学部4年の夏ごろに行われます。
また大学入試とは異なり、大学院の院試の日程は大学院ごとによって異なります。
つまり、日程が被っていない限りは何個も大学院を受けることができます。
○○大学を卒業したから○○大学大学院に進学しなければいけないというわけではありません。
大学院から大学を変更することも可能です。これについては外部院試で後述します。
- 院試は学部4年の夏ごろに行われる
- 複数の大学院を受けることが可能
院試の科目は
科目は英語、専門科目、口頭試問(面接)のことが多いです。
英語
英語に関しては実際に試験を行うわけではなく、TOEICやTOEFLなどの公開テストの結果を採用する大学院が多いです。
ここで注意してい置いてほしいのは
- 学内で行われる非公式のTOEICやTOEFLは院試に使えない
- 2年以内のスコアでないと使えない
ということです。これを知らずに

などと思っていると出願すらできないので注意しましょう。
専門科目
専門科目は学部で習った専門科目です。
大学入試でも物理、化学、生物から選択できたように院試でも選択できる場合が多いです。
例えば、化学系の院試の場合
- 物理化学
- 有機化学
- 分析化学
- 無機化学
- 生化学
- 高分子化学
この中から3種類選んでね。でも物理化学は必須だよ。
みたいなかんじです。
口頭試問(面接)
院試では口頭試問があることが多いです。
もちろん大学院ごとで聞かれる内容は異なると思いますが僕の場合は
- 志望理由
- 研究概要
- 将来展望
でした。
おそらくどの大学院を受験するにあたってもこの3つは聞かれるでしょう。
特に大学院は研究を行うところです。
- 研究に真剣に取り組んでいるか
- 自分の研究を理解しているか
は、かなり重点をおいて見られるはずです。
日頃から言われたことをこなすだけではなく、自ら考える癖を付けておこう!
院試の種類
院試には一般的に2種類あります。
- 内部院試
- 外部院試
です。
内部院試
内部院試とは○○大学を卒業後○○大学大学院に進学することです。つまり、同じ大学の大学院への入試ということです。
内部院試は比較的合格しやすいです。その理由としては
- 講義を受けたことがある先生が問題を作るから
- 先輩からの情報が多いから
です。
・講義を受けたことがある先生が問題を作るから
まず、院試の問題を作る人はもちろんその大学院の先生達です。
そして大学院の先生と大学の先生は同じです。大学院は大学院の別の先生が教えているわけではありません。
つまり、院試を作っている先生の講義やテストを学部時代(大学生の時)に受けたことがあることになります。
同じ人が同じ分野の問題を作るので、学部時代の経験を活かして対策が立てやすいです。

・先輩からの情報が多いから
また、理系の大学では大体の学生が同じ大学の大学院に進学するので先輩からの情報が多いです。
一般的に、院試前の大学3年生の後期から4年生の4月にかけて研究室に配属されます。
そこの研究室の先輩はもちろん内部院試を通過しているので多くのことを教えてくれます。
過去問もくれるでしょうし、分からない問題があれば教えてくれるでしょう。
これらの点から内部院試は外部院試に比べて合格しやすいと言えます。

次に外部院試について説明します。
外部院試
外部院試とは通っていた大学とは別の大学の大学院を受けることです。
例えば、地方の国立大学や私立大学から旧帝大の大学院を受験するということです。
外部院試は、上述の内部院試と比べて情報が少ない点や、今の大学よりレベルの高い大学の大学院を受ける場合が多いので必然的に難易度が高くなります。
ただ、合格すると
- 最終学歴を向上させることができる
- 就活が有利
- 研究環境が向上する
等のメリットが多くあります。
もし、今通っている大学以外の大学院に進学することを考えるのであれば早くから調べて対策を立てましょう。
番外編:内部推薦院試
また番外編として内部推薦院試というものもある大学院があります。
これは、大学内での成績優秀者が早めに院試の合格を貰える制度です。
例えば僕の大学ですと
- 選考基準は、大学の成績、筆記試験、面接
- 合格発表は大学3年の3月末
でした。
通常の院試は8月なので約5ヶ月ほど早く院試の終えることができます。
推薦院試のメリットとしては
- 早く終わるので4年生の4月から研究に専念できる
- 大学の成績が良ければ受かるのは簡単
デメリットは
- 他大学の大学院に進学できない
です。
僕の大学は中堅国立大学だったので、この推薦院試ができるまでは成績上位者の多くが旧帝大や別の大学の大学院に進学していました。
このような事態を防ぐために導入された制度です。
僕はこの制度を用いて内部に進学したのですが、実際に内部に残るメリットやデメリットを経験しました。
その経験についてはこの記事を良かったら読んでみてください。
大学院には何年通うのか?
大学院には2年または5年通います。
なぜ2つあるかというと、大学院には修士課程と博士課程という2種類あるからです。
- 修士課程:2年間
- 博士課程:3年間
です。
ちなみに修士課程を博士課程前期とかいてある大学院もありますが同じ意味です。
まず大学を卒業して大学院に進学したとすると修士課程に進学します。
そして更に大学に残って研究したい時に修士課程卒業後に進学するのが博士課程です。
もしあなたが大学の先生(教授)になりたいと思っているのであれば、博士課程まで進学する必要があります。
ちなみに
博士課程の3年というのは目安であって、成果が出れば2年半で卒業する人もいますし、逆に4年かけて卒業する人もいます。
このあたりの詳細はまた別の記事で書こうと思います。
大体の人は博士課程に進学せずに修士課程修了後企業に就職するので大学院修士課程は2年で終える人が多いです。
大学院の学費は?
学費は基本的に
国立大学なら
- 入学金:30万円前後
- 年間授業料:54万円前後(2021年時)
- 2年間: 150万円前後
私立大学
- 入学金:20万円前後
- 年間授業料等:70~100万円(2021年時)
- 2年間:160~220万円前後
(私立の大学院は大学同様、入学金/授業料ともに研究科や大学によって大きく異なります。)
このように大学と同様国立大学の大学院のほうが必要経費は安いです。
大学院生は何をしているのか?
大学院生の主な業務は以下の3つです。
以下で説明していきます。
講義
意外に思われる方もいるかもしれませんが、大学院生も講義に参加して単位を取得しなければいけません。
ただ、あくまで大学院は研究活動がメインなので大学生(学部生)ほど講義単位を取得する必要性はありません。
大学院ごとに卒業に必要な講義の単位数は異なると思いますが、2年間で20単位程です。
大学を卒業するには4年間で120~140単位ほど必要なので大学院は少ないですね。
また、これは僕の大学院だけかもしれませんが、講義をしている教授自身も

っていうかんじなので、テストは持ち込み可や、レポート等で単位の取得は非常に簡単でした。
おそらく大学院の講義の単位取得は学部ほど厳しくないと思います。

番外編 学部4年時から大学院講義の取得
最近、研究力を上げるために学部4年、大学院2年をまとめて6年とし、カリキュラムを3年/3年に分けている理系の大学・学部もあります。
このカリキュラムの最大の特徴は
大学4年生から大学院の講義単位を取得できる
というものです。
例えば,以下のようなものがあります。
学士特定課題研究の履修を許可された学生等は,400番台の授業科目を10単位を上限として履修することができます。ただし,学士課程の単位とはなりません。大学院に入学後,その授業科目が開講される際に,改めて履修申告を行い,所定の書式を教務課又は学務課に提出した場合に,大学院課程の単位となります。
出典:東京工業大学_大学院授業科目の受講について
基本的に,学部3年生終了時には学部卒業に必要な単位数を取り切っている場合が多いです.
そして,研究に関してもまだ余裕がある時期です.
なのでその時期に大学院の講義を取得してしまおう,という制度です.
たとえ20単位といえど研究をしながら講義を受けるのは非常に大変です.
なので,もしこの制度がある大学院に進学する予定がある人は,制度の規約を確認して4年生から院の単位を取得できるように準備しておきましょう!
TA
TAとはTeaching Assistant の略称で、学部の授業や学生実験の手伝いをすることです。
手伝いといっても、もちろんお金がもらえます。
時給は大学ごとで異なるのですが、1000~1400円/時間ぐらいだと思います。
具体的な仕事内容としては
- レポート採点
- 試験監督
- 講義中の質問対応
- 実験準備
- 実験指導
等です。
大学内で働くことができるので移動に時間もかかりませんし、軽い仕事内容が多いので非常に良いバイトでした。
ただ、案件がそこまで多くなく、多くても年間10~20万円ぐらいにしかならないので、TAだけで生計を立てるのは難しいと思います。
大学院生の生計のメインはTAではなく、奨学金です。
大学院の奨学金は200万円の返還免除制度があるので気になる人はこの記事を参考にしてみてください。
研究活動
これが大学院生のメインです。
ただ、「研究してます」と言われてもイメージが付かないことがほとんどだと思います。
具体的に研究活動とは専攻によって違いはあれど、以下の3つです。
それぞれについて詳しく解説していきます。
実験
僕自身が化学専攻だったのでThe実験って感じのことをしていたのですが、どの専攻に行ってもこの「実験」という部分はあると思います。
例えば
- 情報だと「プログラミング作成」
- 建築だと「モデル物の作成」
等色々あると思います。
つまりここで言う「実験」とは薬品と薬品を混ぜることだけでなく、実際に手を動かして何かを作ったり、解析したりすることです。
ここまで聞いて

と思う人もいるかと思いますが
大学(学部)までの実験と大学院で行う実験/研究は全く違います。

と言って大学院を辞める人もいます。
詳しくは以下の記事で説明しているので気になる人は読んでみてください。
この記事では、化学系の研究の具体的な流れを紹介します。
化学系大学院の研究の流れ
1. 文献調査
2. 実験/解析
1. 文献調査
大学院における研究の実験にはマニュアルは存在しません.
なぜなら、誰もやったことのないことをするのが研究だからです。

そんな時に必須なのが文献調査です.
インターネットを用いて過去の参考になる文献を探して実験方法を模索します.
文献は非常に多く,また英語で書かれているので特に研究開始当初は苦労します.
2. 実験/解析
文献調査が終わって,実験方法が決まったらいよいよ実験開始です.
試料を調整し,それを何千万円もするような装置で測定します.
そして,そこで得られたデータを解析していくという流れが化学,生物系では一般的です.
そして,もし解析した結果が思い描いたデータでなければ,再度文献を探し,失敗原因を考えて実験方法を改良し,実験を行います.
ここで質問なのですが

どれぐらいの確率で実験が成功すると思う?
大学生までは基本的にテキスト通りすれば90%以上は成功していたと思います。
答えは1%以下です。
基本的に大学院の研究ではほとんど思い描いたデータは出ません.これが大学生までの実験と大きく違う点です.
僕の場合ですと,思い描いたデータを取れたのは3年間で1度だけでした.なので確率的にいうと,1%以下ですね.
基本的に文献調査→実験→失敗→実験方法改良→実験→失敗この流れを繰り返します.
ここまで聞くと

と考える人もいるかもしれませんが、ちょっと待ってください。
僕は大学院に行って後悔してません.確かに、大変なことも多いですが、メリットの方が大きいと考えています。詳しくは以下の記事を読んでみてください。
報告書作成
所属する研究室によりますが,1週間もしくは2週間に1回研究報告会があるので,それに向けた報告書の作成を実験と並行して行います.
報告書では文章だけでなく,測定データのスペクトル,分子構造式,実験装置の概略等,図や表を多く作成しなければいけません.
なので,報告会前はみんなで朝まで資料作成ということが頻発してました.
これだけ頻繁に資料を作製していると,Officeやライティングのスキルが学部時代と比較して飛躍的に向上します.これも大学院に行く大きなメリットだと思います.
大学院に行くとPCスキルや資料作成能力が向上する
学会
大体の人が

ってなると思います。
学会とはある分野の専門家たちが集まって自分の研究を発表しあい、意見交換をする会です。
学会に参加するためには自分の研究データをポスターやスライドにまとめなければいけません。
これが結構大変です。
特に初めのころはかなりの時間を要します。僕の場合は最終的に先生のokを貰うまでに2週間ぐらいかかったと思います。
しかも資料を作成して終わりではなく、本番までに発表練習をしなければいけません。
これも最初のころは1週間かかってました。

もし、大学院に進学すれば、このように結構準備が大変な学会というイベントに定期的に参加する事になると思います。
たまに学会に向けてのデータ整理、資料作成が終わらなくて徹夜することもあると思います(笑)。
でも学会に参加すると良いこともたくさんあります。
まずは、
です。
僕は大学院に進学した当初は、発表中ずっと原稿を読むほどプレゼンが苦手でした。
そんな僕でも回数をこなせば、そこまで緊張せずに原稿なしで20分弱の発表ぐらいならできるようになりました。
そしてもう一つの良いことが、
です。
学会には自分の研究分野に凄く詳しい人、達人のような人がたくさんいます。
そんな人達の発表を聞いたり、ディスカッションをしたりすると1つは大きな発見があります。
もし、大学院に進学して研究につまずいたときは、ぜひ学会に参加してみてください。きっと何かのヒントを得られるはずです。
研究活動まとめ
以上研究活動についてまとめますと
- 過去の文献を参考にしながら実験する。
- 研究室内の報告会向けに資料を作成する。
- たまに学会に向けて資料を作成する。
という流れで修士論文作成に向けて研究活動に勤しんでいます。
まとめ(大学院って何?)
この記事では
- 大学院って何?
- 大学院に進学するためには?
- 大学院には何年通うのか?
- 大学院の学費は?
- 大学院生は何をしているのか?
について解説してきました。いかがでしたでしょうか?
大学院に進学するか悩んでいる人の少しでも助けになれば幸いです。
もし金銭面で大学院に進学するか悩んでいる人がいればこちらの記事を読んでみてください。
質問やコメントがあれば↓からお願いします!
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